こんにゃくライトセイバー

あさおきて ひるねして よるねた

どうしよう。題名とか思いつかない

昨日、女の子になりたいとか書きましたが、あれ間違えましたね。
何だ?「女の子になりたい」って。変態か?と。
僕のささやかな願い、「児童になりたい」の間違いでした。
ノスタルジーを味わいたいの。


具体的には10歳くらいになりたいですね。
成長がゆっくりで、周りより小さい男の子。
見た目もひ弱でよくイジメられる。
「おい、のひ太。オレたち、あそこの化け物屋敷に肝だめしに行くんだ。お前も連れて行ってやるよ」。
断る勇気もない僕は行きたくもないのに「う、うん。行くよ……」と言わざるをえない。


そこの化け物屋敷は地元で有名な心霊スポットで、きっと昔は豪奢だったんだろうけど、いまやボロボロになった空き家だ。
人の気配がないのにたまに人影が見えると、地元では知る人ぞ知る場所になっている。
そこで僕を先頭に立たせた肝だめしをして、急に後ろから大声を上げて驚く僕を楽しもうというイジメっ子たちの作戦だった。


いざ化け物屋敷に潜入してみると想像以上に気味が悪く、僕もイジメっ子たちも、心臓の音がうるさく感じるほど緊張することになった。小さな物音で、誰ともなく悲鳴をあげる。
気絶するんじゃないかと思うほど緊張しているところ、出会い頭に真っ黒な人影が現れる。
「ギャー!」
我先と逃げるイジメっ子たち。
「ま、ま、待って」。
腰が抜けて逃げ遅れる僕。
人影はじっとこちらを見据えると「ここには二度と来るな」と低い声で告げ、立ち去ろうとする。

 


でも、足を引きずっているため早くは歩けないようだ。
足を引きずる?
足がある。
幽霊じゃない!
ここまで気がつくと、僕は自分でも思いがけず「足が悪いの?」と影に対して聞いていた。

 


影はゆっくりと振り向く。
よく見ると影は髭を長く伸ばし、長い黒いコートを着たおじいさんだった。
「帰れ」おじいさんは言う。
「ぼ、ぼくのお祖父ちゃんも、あ、足が悪くて、その、おんなじような歩き方だったんだ……」
混乱した僕はとにかく何か喋らなきゃと思いついたことを口から吐き出す。
「お、お祖父ちゃん、先月亡くなっちゃって……。僕が会いに行くといつも、元気そうだったのに……」。
黒いコートのおじいさんは、僕のことをじっと見つめ、やはり「帰れ」と小さくつぶやき、今度は振り返ることなく化け物屋敷の奥に消えていった。


呆気にとられ、屋敷から出るとイジメっ子たちが外で待っていた。
「お前、あの影とずっと一緒だったのか?」「襲われなかったのか?」「何か言われたのか?」と矢継ぎ早に聞いてくる。
なんだか面倒になった僕は黙って立ち去ると、次の日から幽霊と戦った男として認められ、相変わらず話しかけられることはなかったけど、イジメられることもなくなった。


僕はそれから、学校で嫌なことがあったり、まっすぐ家に帰りたくない時に化け物屋敷に行くようになった。
おじいさんは毎回「帰れ」という割には、僕が行くと必ず顔を見せた。
僕らはほとんど話さず、思い思いにふるまっていた。
そうして時間を共有すると、おじいさんは化け物屋敷に無断で住み込んでいる浮浪者だと分かってくる。
それでも、立ち振る舞いはかくしゃくとして、身の回りも綺麗だった。
僕は初めて『品がある』という言葉を知った。


僕がいつも通り化け物屋敷で宿題をしていると、学校に筆箱を忘れてきたことに気がついた。
困っているとおじいさんが芯の折れた鉛筆を差し出してくる。
「芯が折れてるよ。これじゃ、書けないよ」と僕はおじいさんに不満を告げる。
「折れているなら、削れば良い」と、どこからか小刀を持ってきてくれた。
なんだか、高そうな小刀だ。
「こんなので削ったことないよ」と、言うと「何だ?最近の子供は小刀を使わないのか?」と、僕に鉛筆の削り方を教えてくれた。


この出来事からおじいさんは身の回りのことを僕に手伝わせながら、色々なことを教えてくれるようになった。
親切には教えてくれないけど、先にお手本を見せて「やってみろ」とだけ言う。
上手くできれば満足そうに頷き(いつもの仏頂面だけど、この頃にはおじいさんが満足してるかどうかは分かるようになっていた)、逆に失敗すればもう一度初めからお手本を見せてくれた。


こうして僕は小刀の使い方、解けない紐の結び方、火の起こし方など色々なことが出来るようになっていった。
出来る事が増えるのが嬉しく、僕は毎日、化け物屋敷に通うようになっていた。


ある日、授業が終わってすぐに化け物屋敷に行こうとすると、チカちゃんに呼び止められた。
チカちゃんはガリガリに痩せて、髪の毛は短く、男の子みたいな女の子だった。
小さい頃からうちの近所に住むチカちゃんは、あまり友達がいない僕にもたまに話しかけてくれる。
「のひ太、最近飛ぶように帰るよね。でも、帰りが遅いってのひ太のママが言ってたって」
どうもチカちゃんのお母さんに、うちのママが愚痴ったらしい。
そうか。家ではいつもニコニコしてるママだけど、心配をかけてたんだな。今日は化け物屋敷から早く帰ろうかなと思い、そのことを教えてくれたチカちゃんにお礼を言う。


「まぁ良いんだけどね。で、どこに行ってんの?」
マズイ、と思う。チカちゃんは知りたがりで「教えて」と言ったことは、意地でも秘密を明かそうとする。そして、必ず明かす。
僕はチカちゃんに聞かれた時点で、秘密をあきらめていた。
せめて、大事にならないように教室の外に連れ出して真相を告げようとすると、秘密の場所に連れて行くと勘違いしたのか、僕より先に学校を出てズンズン進んだ。
恐るべきことに、化け物屋敷にまっすぐ進んで。
ここまで来て僕は、ようやくチカちゃんをおじいさんに会わせる決心をした。
あわよくば、イジメっ子のように逃げ出してくれないかなってことを密かに願って。


でも、チカちゃんはおじいさんに会うとポカンとしただけで、「おじいさん、足が悪いの?」と聞いた。
おじいさんは、それを聞くと「ホッホッホ」と、僕にも見せたことのない笑い顔を浮かべたので、何だか悔しかったけど、チカちゃんはお構いなく「ふーん。良いとこね。気に入ったわ。たまに来るわ」と言い放ち、僕にさらなる衝撃を与えた。


こうして、僕とおじいさんとチカちゃんとで、放課後を過ごす日々が始まった。
「たまに来る」と言った割にチカちゃんは毎日、顔を出す。
「チカちゃんも友達がいないのかな?」と思うと最初は邪魔くさかったチカちゃんと過ごす時間も、奇妙な連帯感で楽しくなってきた。


おじいさんが教えてくれることも変わってきた。
掃除の仕方、花の育て方、林檎をウサギにする剥き方……。
僕は「おじいさんは物知りだなぁ」と何でも楽しかったけど、チカちゃんは雨水を飲水に変える方法とか、武器の作り方とかを特に喜んだ。
そして、たまにだけどおじいさんは笑うようになった。


こんな日が毎日続くと思っていた。
それは木枯らしが吹き始めた肌寒い日だった。
僕らは競い合うように化け物屋敷に向かうと、いつも以上に人の気配がないことに気がついた。
綺麗に清められた部屋。もともと少なかった私物がなくなっている。
おじいさん?
僕らが行くと、面倒くさそうに、それでもすぐに出てきてくれるおじいさんがその日は出てこなかった。
たまたま今日はでかけたのかな?と二人で言い合って、その日は家に帰った。どうしてもつのる不安な気持ちを隠して。
でも、不安に思うことほどよく当たるということを、僕は10歳にして初めて知った。
次の日も、その次の日もおじいさんが出てくることはなかった。


「何がいけなかったのか?」「どうしてか?」とチカちゃんと最初は話していたけど、共通の場所を無くした僕たちは、そのあとの思春期も相まって、以前のように話すことはなくなった。
あまりにも突然で、悲しいとかよりも疑問の方が大きく、それも時間が経つことで忘れるようになった。
こうして突然に、おじいさんとの毎日が終わった。


それでも、僕とチカちゃんの話は続く。
おじいさんと別れたあと、365日を7回くりかえすことで、僕らは17歳になっていた。
相変わらず冴えない僕は、日に日に綺麗になっていくチカちゃんと、より一層話すことはなくなっていた。


だからその日、チカちゃんに声をかけたのはたまたまだった。
たまたま、チカちゃんが近所の公園で、一人で泣いているのを見つけてしまったからだ。
「チカちゃん……?」

 


と、こんなところでビックリすることに続く!!
やー働いてる時に、ふと思いついて帰りの電車で書き始めてみたんですが、やっぱり終わらなかった!
こういうのを求められているわけじゃないって知ってるんですが、それでも思いついちゃったんだもん!仕方がない!
休んだりもしたことがあるんですが、それでもけっこう長く日記を続けてきて、続くのは初めてですね。
……続く、のか?
気が向いたら続きます。くらいにしておきます……。