こんにゃくライトセイバー

あさおきて ひるねして よるねた

時計修理

今日、時計を修理に出してきたんです。
何かネジを巻いてもすぐ止まっちゃう。
むかーし腕時計を落っことした時、オーバーホール(分解掃除)で直したことがあるんですが、まーバカ高い。
修理するのにその費用?新しいものが手に入るわけでもないのに?と、もう半年以上放置してました。


ただ、初めてのボーナスで買った時計。
息子とか出来たら「父さんの腕時計、良いなぁ」とねだられても上げない時計。
大学入学を期に家を出る息子を玄関前で見送る時、おもむろにつけてる時計を外し「祝いだ。持っていけ」と裸のまま渡す。
「と、父さんの大事な時計じゃ……」とうろたえる息子。
「もうお前のものだ。金のない時に売れ」とだけ告げて、家に入る親父(僕)。
「お父さん、普段は喋らないけど、あなたのこととても心配してるの。たまには帰ってきなさいよ」と、フォローする妻。
じっと時計を見つめ、その視線を家に移し、大きく息を吸い込んだと思ったら「ありがとう!父さん!」と家の中の親父(僕)に聞こえるような大声を上げる息子。
その声を聞きながら、静かに日本酒を飲む僕。
そんな思い出があふれる(はずの)時計なんで、直そうと思い立ったのです。


直せる窓口があるという伊勢丹の時計売り場へ。


伊勢丹の時計売り場。
そこまでビニール床だったくせに、時計売り場だけ何故かじゅうたん素材。
買い物してるお客さんもセカセカせず、余裕のある歩きぶり。
無意識に背筋が伸びます。


とりあえず、立ち姿がスッとした年配の女性が受付に立ってらしたので、修理したい旨告げると「こちらへどうぞ」とフカフカしたソファに通されます。
隣ではプードルの話を売り場の方にしてるご婦人。
平日、伊勢丹の時計売り場。


しばらくすると、「お待たせしました」と見るからに高そうなスーツを着た『ロマンスグレー』という言葉が似合いそうな男性が対応に来てくれました。
時計を見せると「失礼」と手に取り、縦にしたり横にしたり点検されて「ふむ。よく使い込まれていますね」とこちらに静かな笑顔を向けてくれる。褒められたようで、なんか嬉しい。
ただ、修理はメーカーに出す必要があるとのこと。
「お値段はこちらになります」と、リストを見せてもらいます。


ガビョン。
たっっっけーーーーー!!
高いとは思ったけど想像の二倍高い。テレビ、買えんじゃん。
「如何が致しましょう?」と、聞かれる我が身。
伊勢丹、フカフカなソファ、プードルの話を続ける婦人、ロマンスグレー……。


「えぇ。そちらで問題ありません。よろしくお願いします」
と、このお口が!この悪いお口が言ってたの!!


だって、あの場で「あ、ちょっと高いんで考えます」とか言えない!
足とか組んじゃってたし、言えない!!
僕の偉いとこは、その逡巡をロマンスグレーには見せなかったこと。
もう気分は若手経営者ですよ。ITでイノベーションとかしちゃってますよ。


申込用紙にサインをして、伊勢丹から退場。
「落ち着け。胸を張れ!」と自分に言い聞かせないと、その場で倒れてしまいそうでした。
節約したいって言ったばっかりなのに……。


ちなみにこんな風に書くと「どんな高級時計だよ?」と思われそうですが、ぜんぜん!そんなことありません。
だからこそ余計にショッなのです……