こんにゃくライトセイバー

あさおきて ひるねして よるねた

職場のある町

僕の勤め先がある町は「職場がある」という一点において、どうしても好きになれないんですが、でも職場がなかったなら……と考えると、良いところだと思うんですよ。
地方都市(というほど、地方ではないんですが)特有の、閉じてるけど、居心地の良さそうなコミュニティを何となく感じます。
ここに住んでる人たちは、ここが好きなんだろうなぁと。


こんだけ忙しくなかったら、いってみたいお店も色々。
よさげなお店がたくさんあるんですよ!


……なんで、こんなことを急に書いたかというと、ご飯を食べようと外に出て何となくいつもと違う道を歩いてたら、日曜のこの時間だっていうのに、小さなお店にいっぱい人が入ってるんですよ。
しかも、どのお店も!
で、お店の人とお客さんが楽しそうにしている。みんな良い顔してるなぁって思ったんですよ。
そんな光景を指を加えて見てきました。


で、思うわけです。
ちょっとセンスの良さそうなバル的なお店にフラッと入っていって、若主人に「お客様、お一人ですか?」って聞かれて、しどろもどろに「あ、はい!」とか答えて。
「どうぞー」って常連さんと、直に会わないような席に通されて。
「うち、初めてですよね?差し障りなければ、どうやってうちを?」と聞かれ、「あ、あの職場が近くて……。で、ご飯食べに外に出ると、いつも美味しそうな匂いがして、楽しそうで……気になってたんです」とか言って。
「そうですかー嬉しいなぁ。サービスしちゃいますね」と若主人。
「ほーら!お客さん、一人で静かに飲みたくていらっしゃってるかもでしょ!ズケズケ喋らないの!ごめんなさいねー。この人、気に入ったお客さんにはこうなんですよ。うるさいでしょ?」と、若主人の奥さんだろう綺麗な人に謝られたり。
「あ、いえ。何かこういうの、楽しいです」と答えてみたり。

「でもさー楽しそうにしてて来てくれたってことは、我々も売上に少しは貢献してるんだね」と、陽気な常連さんがいたりして。
「でも、ゲンさん(常連さんの名前)だと厳ついから女の子はこれないんだよねー」とか、他の常連さん。
「ゲンさん、外から見えないとこに置いとこう!隠して」「代わりにほら、若い男の子も来てくれたから見えるとこに座ってもらいましょうよ」と、さらに他の常連さん。
あっけにとられる僕。
そんな喧騒を他所に再度、若主人。
「うちの上さんじゃないけど、こんなんですいません。でもね、実は私もお客さんのこと知ってたんですよ」
「え?」
「や、うちの前よく通ってるなぁって。気分を害したらごめんなさい。いつも、ずいぶん暗い顔されてるなぁって」
聞き入る僕。
「うちに来てくれたら、バカな話して、美味しいもの出したりできるのになぁってずっと思ってたんですよ。だから、お客さんいつも同じ時間にうちの前を通られるんで、その時は良い匂いがする食材を仕込んでたんです。うちに入れーって」
屈託なく笑うご主人。
「だから、今日は来てくれて本当に嬉しいんです!やった!って。ご覧の通りうちの店に来てくれる人たちは、気のいい人ばっかりだから。昼間辛いかもだけど、今日は楽しんでいってください」と。


そんなことないかなぁって思うんですよ。


で、僕もいつの間にか常連になるものの、仕事が終わってこの土地を離れるってなって。
なかなか言い出せないところ「のひ太さん、仕事終わったんでしょ?」って奥さんに見抜かれて。
「な、なんで分かったんですか?」と聞くと
「分かるわよー。言い出しにくいって顔に書いてあるわよ」と笑う奥さん。
「じゃあ……」と常連さん。
「この町を離れちゃうの?」
なにも言い出せない僕。
賑やかなお店が静まる。
パンパンと手をならすご主人。
「ほらほら!暗い顔しない!のひ太さんの仕事が無事に終わったんだから!今日はみんなで、のひ太さんに一杯ずつ奢りね」とかなって、最後の夜は朝まで飲んじゃったりして。
で、飲み疲れてみんな寝静まってるところ、こっそり帰る僕。
ちょっと泣きながら帰ってるとポケットに違和感。
何だろうって出してみると小さなメモが。
「いつでも待ってます。お店一同より」と。


えっと、長くなりましたがこんなことないかなぁって思うこの頃。
アイムアット職場。
仕事しろって話ですね。もうずーっとこんなこと考えてたい!